特定の食べ物を食べた後に、運動をすると起きる、重症のアレルギー発作です。
この特別なアレルギー発作は、その食物を食べただけでは起こらず、何も食べずに運動をしただけでも起こりません。
食後、運動をする事で初めて起こります。
症状
蕁麻疹、腹痛、咳や呼吸の苦しさ、めまいや気が遠くなる(低血圧症状)などの全身にわたるさまざまな症状が次々と起こります。
これらの症状は、蜂に刺された時などに起こる、通常のアナフィラキシーと同様です。
適切な治療が間に合わないと命を落としうる重篤なアレルギー発作です。
参考:アナフィラキシー
治療
いち早くアドレナリン(エピネフリン)の注射をすることが重要です。
自己注射用のエピペンを処方されていれば、注射しましょう。
エピペン注射の有無にかかわらず、救急車を呼んで、近隣の大きな病院の救急外来を受診しましょう。
点滴や酸素吸入など、追加の治療が必要な場合もあります。
焦って小走りになるとかえって危険です。落ち着いて行動しましょう。
原因となる食物
小麦が有名ですが、エビ・カニなどの甲殻類や、果物での報告もあり、その他の食品で起こる場合もあります。
食後何時間以内の、どの程度の運動がリスク?
食後2~4時間以内に運動した際に起こる場合が多いとされますが、それ以降に起こる場合もあります。
運動の内容ではなく、強度が関係します。
ジョギングなどの軽く息が上がる程度の運動が目安となりますが、早歩き程度でも起こる場合もあります。
運動の代わりに、誘因となるもの
食後の運動以外にも、入浴や、アルコールの飲酒、痛み止めの内服などもアレルギー発作の誘因となりえます。
そのほかにも、ストレスや疲労、睡眠不足、風邪といった体調不良、高温多湿・寒冷といった気象条件、女性では生理周期なども、発作のリスク因子と考えられます。
こういった複数の要因が関与しているため、同じような状況でも、症状を起こしたり、起こさなかったりする場合があり、油断禁物です。
どうして食後に運動した時にだけ起きるの?
運動時に腸管のバリア機能が低下するためだと考えられています。
つまり、運動時には腸の壁を物質が通過しやすくなるため、アレルゲンの吸収が高まる事で発作が起こるといわれています。
「リーキーガット症候群」とは違います
腸のバリア機能が低下する現象は、炎症性腸疾患やアスリートの胃腸症状などの研究でも注目されています。
「腸管のバリア機能が低下する」、「腸の壁を物質が通過しやすくなる」と聞いて「リーキーガット症候群」を連想される方がいらっしゃるかもしれません。
「リーキーガット症候群」は正式な医学用語ではありません。
まだ十分に解明されていない分野ですが、さまざまな体調不良の原因として言葉が一人歩きしている印象がありますので、安易に飛びつきすぎないようにお気をつけください。
参考文献
- アナフィラキシーガイドライン 2022 日本アレルギー学会
- 食物アレルギー診療ガイドライン 2021 日本小児アレルギー学会