イネ科の花粉症と、雷雨後の喘息発作

積乱雲と雷 アレルギー

晩春から初夏の頃、強風を伴った雷雨の日に喘息発作が多発するという報告があります。オーストラリアやイギリスをはじめとして、世界各国から報告されています。Thunderstorm athma(雷雨の喘息)と呼ばれています。

喘息既往の無い人にもおこりました

オーストラリア、メルボルンでの事例が群を抜いて多く、2016年11月21日夕刻の雷雨から翌朝にかけて、約4000名が呼吸器症状を主訴に救急外来を受診し(962名は救急車)、突然押し寄せた患者増に救急医療が麻痺状態に陥りました。

患者さんは主に20-40代で男性がやや多く、喘息の既往がない人が56%を占め、大半の患者さんにとっては、寝耳に水の状況でした。

メルボルンは日本同様に四季のある温帯で、南半球のため9-11月は春の季節です。その日は、最高気温35℃を記録したとても暑い日で、イネ科の花粉が100個/m3以上と非常に多く飛散していました。

イネ科の花粉症がリスク

雷雨に伴う喘息発作は、オーストラリアの例ではイネ科(rygrass)の花粉症がリスクとして報告されており、イギリスなどでは、カビに対するアレルギーの関与も指摘されています。これらのアレルゲン飛散量の多い日に、雷雨に伴って局所的な前線が発達し、強風・気温の急降下・湿度上昇といった気象条件が重なることで起こると考えられています。

捲き上げられ、粉砕され、降り注ぎ、気管に届いてしまう花粉

雷雨をもたらす積乱雲(入道雲)からは冷たい下降気流が噴出しています。地面とぶつかると水平方向の強風となり、花粉やほこりを捲き上げます。冷たい風が周囲の暖かい空気とぶつかると上昇気流を生みます。強風にあおられて上空へと捲き上げられた花粉は、雨や雷にさらされて、はじけて小さな粒子となり、風雨とともに降り注ぎます。

Marks et. al 2001, Thoraxに一部追記

花粉は直径35-40μmで、通常は鼻や喉でとらえられ、くしゃみや鼻水といった上気道の花粉症症状をもたらします。雷雨ではじけると5μm以下の小さな粒子群となって、気管・気管支といった下気道にも到達してアレルギー反応をひきおこし、喘息発作をおこすと考えられています。

日本でも今後増えそうです

地球温暖化に伴って、世界的に様々な花粉の飛散量が増えると予想されています。日本の気候も温帯から亜熱帯に変化しつつあり、集中豪雨も増えています。日本ではまとまった報告はまだみられませんが、今後増えるのではないかと危惧しております。

5-6月の、初夏に花粉症状のある人は要注意です。雷鳴と強風の吹き荒れる、突然の集中豪雨の日には、雨が止んだ後でもしばらく出歩かないことがお勧めです。無治療の喘息も、悪化のリスクと報告されています。吸入などの治療を継続しておくことと、悪化時の対処について専門医などに相談しておきましょう。

イネ科の花粉は、初夏と、秋と2回にわけて飛散のピークがみられます。秋の台風シーズンも要注意です。

参考:初夏の、イネ科の花粉症

参考文献

  1. Review of response to the thunderstorm asthma event of 21–22 November 2016 – Final Report on 27 April 2017.
  2. Lancet Planet Health. 2018 Jun;2(6):e255-e263.
  3. Journal of Asthma and Allergy 2019:12 101-108.
  4. Thorax . 2001 Jun;56(6):468-71.
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