柑橘のたどった旅路に、想いを馳せる

柑橘類が変化しながら伝播する様子、東南アジア周辺 その他

柑橘アレルギーと関連して、柑橘類の派生について、遺伝学的に研究した論文を2つ紹介します。

どの柑橘同士にアレルゲンの交差性があるかは十分解明されていませんが、理解のヒントになればと思います。

1つ目は、2018年のNatureの論文で、世界中の柑橘について、先祖がどのように伝播していったかの推定もされています(記事の表題画像)。

地殻変動の影響で隆起を続けるヒマラヤ山脈が、大気の流れを分断することで、東南アジアのモンスーン気候が形成されたそうです。これは、夏は海から陸へと風が吹く高温多湿な雨季となり、冬は逆に陸から海へと風吹いて、乾季を特徴とする気候です。

そんな東南アジアで柑橘の先祖は約600-800万年前に多様化し、各地に伝播しながらシトロン、ザボン(ブンタン)、マンダリンといった種族が生まれ、約400万年前にはオーストラリア原産のライムが生まれたと推定されています。

(オーストラリア原産ではない方の)一般的なライムやレモンは、マンダリンとシトロンを掛け合わせて生まれており、オレンジやグレープフルーツは、マンダリンとザボン(ブンタン)を掛け合わせて生まれたようです。

マンダリンとわかれたのが、金柑(Kumquat)やオーストラリア原産ライムの共通の祖先だったりと、興味深いです。

世代を重ねながら伝播し、根をおろした地域に応じて変化していった様子を推測するのは、祖先のルーツをたどる古代ミステリーのようなロマンがありますよね。

Genomics of the origin and evolution of Citrus
Wu GA, et al. Nature. 2018 Feb 15;554(7692):311-316.

Wu GA, et al. Nature. 2018 Feb 15;554(7692):311-316.よりFigure 1
CI, C. medica; FO,Fortunella; MA, C. reticulata;
MC, C. micrantha; PU, C. maxima; UNK, unknown.
Wu GA, et al. Nature. 2018 Feb 15;554(7692):311-316. より Figure 2

もう一つは、2016年の日本からの報告で、国内で流通するたくさんの種類の柑橘について取り上げています。

温州みかんはマンダリンの近縁で、タンカンはオレンジの近縁で、ゆずがライムの近縁で、日向夏がレモンの近縁で、夏蜜柑がタチバナ(マンダリンから派生)の近縁だったりなど、なるほどそうなのかと興味深いです。

こちらの論文内では、日本の農学者、田中長三郎の分類が、Swingleの分類と並べて紹介されており、私たちの祖先に柑橘類の世界的な権威がいたのだと知り驚きました。

Hybrid Origins of Citrus Varieties Inferred from DNA Marker Analysis of Nuclear and Organelle Genomes
Shimizu T, et  al. PLoS One. 2016 Nov 30;11(11):e0166969.  

Shimizu T, et  al. PLoS One. 2016 Nov 30;11(11):e0166969.  より Fig 6
Shimizu T, et  al. PLoS One. 2016 Nov 30;11(11):e0166969.  より Fig 7

Pummelo=ザボン、ブンタン

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